ローズは、別名香りの女王と呼ばれ、特にブルガリア、イラン、モロッコで栽培されているダマスクローズは有名で、観賞用、香料用として最も親しまれてきた花の一つです。その歴史は古くBC12世紀頃のペルシアの地に端を発するといわれています。
多くの人にとって、身近であり、魅力的なローズについて、岐阜県立国際園芸アカデミーの上田善弘氏がローズの効能について以下のような解説しています。
古来よりローズの香りには色々な効果があると言われてきており、特に薬用効果としては血圧の降下作用から抗炎症作用、抑うつまで言われています。一般的に香りを嗅ぐことにより、その臭覚刺激が脳に伝えられ、内分泌系、免疫系、、自律神経が刺激を受けて色々な効果を示すことになります。
鎮静効果
ローズの成分の一つであるジメトキシ-5-メチルベンゼン(以下、DMMB)は他の香気成分に比べ人により高い鎮静効果を及ぼすことが、脳波、心拍変動、ストレスホルモンの分析の結果、明らかになった。このことからもローズの香りを嗅ぐことで、高揚した気分が静まり、リラックス効果が期待される。
記憶向上効果
ローズの香りの主要成分であるフェニルエチルアルコールを用いて、その香りを深い眠り(ノンレム睡眠)の時に嗅がせると記憶の固定化が促進されるという報告があります(2007年Rasch,B他 Science,315)。トランプの神経衰弱のようなコンピューターによる記憶ゲームをしてもらい、その間にローズの香りを嗅がせる。その後、睡眠中の色々な段階で同じ香りを嗅がせ、翌日同じゲームを行うと、ノンレム睡眠で香りを嗅がせた被験者の正答率が高くなるというものです。
この実験結果から学習前に嗅いだ香りによって睡眠中に新しい記憶形成が促進され、睡眠中に記憶の固定化を引き起こすことが示されたことになります。また、熟睡中の香りは、脳の海馬を活性化することもMRIから明らかにされています。つまりは、熟睡中に嗅ぐローズの香りで学習中の状態が呼び起こされるように脳(海馬)が活性化したことで、記憶の向上に結び付いたのではないかと考えられています。
受験勉強に明け暮れた学生時代、前の日に覚えた単語や方式が次の日になると、すっかり頭から抜け落ちてしまった記憶がありますが、その時に、ローズの香りを嗅いでいたら、少しは学習効率が上がったのではないかと今さらながらに思います。