自然の香りで睡眠改善効果!?

自然の香りで睡眠改善効果!?

 厚生労働省が実施した平成29年の『国民健康・栄養調査』を行い、睡眠に関する調査報告(20歳以上の77,859名を対象)の中で、男性で36.1%、女性で42.1%が6時間未満の睡眠しかとっていませんでした。これまで多くの睡眠研究報告から、健康維持に必要な成人の睡眠時間は7~9時間で、最低でも7時間の考えられていることから、成人の3割近くが十分な睡眠がとれていないと報告しています。本来、取るべき睡眠時間が取れず、睡眠不足が蓄積された状態を“睡眠負債”と呼ばれ、注意緩慢による事故や心身の疲労感による健康被害のリスクの上昇が数多くの研究論文の中でも指摘されています。

 特に近年はSNSなどの普及により長時間スマホやパソコンなどを使用する機会が増えたことで、ブルーライト(短波長で強いエネルギーを発する)による眼精疲労や体内リズムの乱れ、睡眠と覚醒のリズム攪拌を引き起こし、結果的に睡眠負債を増やしているとも考えられています。特に就寝前にブルーライトを浴びると頭の中が覚醒して良質な睡眠がとれなくなるのはよく知られています。

 現代人にとって、重要な課題の一つはいかに睡眠負債を減らし、良質な眠りを実現するは言うまでもありません。九州大学の清水邦義准教授らが実施した“自然の香りがもたらす睡眠改善効果”に関する実験の中で、スギやモミなど針葉樹の精油に多く含まれる-酢酸ポルニルという物質にファーカスを当てて、睡眠覚醒リズムにどのような影響が出るのかを調査しました。実験は50代以上の女性23名に対象とし、2週間にわたり日常生活の中で、就寝時に香りを吸引する群と香りを吸わない群に分かれて実験を行いました。その結果、2週間の起床時間に関しては、両群でも大差がなかった一方で、“香りがある一群”は、2週目以降に起床時間が早まり、睡眠時間の向上が見られました。この結果は、スギやマツなど酢酸ボルニルを多く含む精油には、一定の睡眠の質向上に役立つと言えるでしょう。また、スギやヒバに含まれるセスキテルパンセドロールという成分には誘眠作用が確認されており、結果として睡眠効率の向上が報告されている。

日本人に身近なスギな香りがどことなく落ち着いた気持ちにさせてくれるのはその成分が少なからず影響しているのでしょう。

参考:Effect of natural fragrance environments on human sleep improvement.
『自然の香りの空間におけるヒトの睡眠改善効果』